随分と投稿が開いてしまいました。
コロナに振り回された2020-2023春まででしたが実はまだ全然終わっていません。
少しだけコロナは落ち着いていますがインフルエンザが猛威を奮っている最中でおそらく年末にかけて第10波がくるでしょう。
コロナのmRNAワクチンを開発しているモデルナ社がコロナ、インフルエンザの感染状況についての推測値をウェブで見られるようにしてくださっています。ワクチンのブースターを受けて密集した屋内ではマスクを心がけましょう。
さてそうはいってもみなさまコロナにそれほど関心も無くなってきていますでしょうし久しぶりに専門のことについて書こうかと思います。
以前いくつか書きかけてやめているホルモンと血圧のお話しについてはいつかエンレストという新規降圧薬に絡めてお話ししようかと考えています。
今回は昨今にダイエット目的で使われて品不足が嘆かれているGLP-1アナログのうち唯一の飲み薬であるリベルサスについてです。
患者様向けの情報サイトはこちら。
人間の身体って面白くて基本的には生命活動を維持するためになんとかして血圧を上げようとするし血糖値を上げようとする方向に働いています。血糖値を下げることのできる唯一のホルモン、それがインスリンですが少しイメージを変えていただければと思い筆を取りました。
生きていくためには全身の細胞がエネルギーを取り込んで使えることがとても大事です。
なのでご飯を食べて、あるいは体内の蓄えから血糖値を上げるいろいろなホルモン(コルチゾールやカテコラミン、グルカゴンなど)が頑張って血液に溶け込んでいるエネルギーが最低限を切らないようにしていて、そこでインスリンが働くことにより細胞にエネルギーが届くのです。なのでインスリンは血糖を下げるホルモンというよりは血糖を活用するホルモンというほうが適切でしょう。
実際に1型糖尿病という自分でインスリン分泌ができなくなってしまう病気ではむしろ痩せていったりします。
ではなぜ太った人が糖尿病になりやすいのか?これは太るとインスリン抵抗性というのですが同じインスリンの量では血糖値が下がらないのでインスリン分泌が過剰になります。
つまりどうにかして血糖を維持している側からインスリンが出るのでどんどん細胞に糖が取り込まれます。
余っているのにです。つまり余計に太ります。
この悪いサイクルが糖尿病治療を厄介にしている難題の一つです。
さてではインスリンがどのように分泌をコントロールされているか、というお話になります。
基本的にエネルギーは無駄にできないので使うか貯めるかの二択です。インスリンはすかさず分泌されて細胞に糖を送り込みます。
なので①血糖値が上がったのでインスリンを分泌する、という系と②ご飯を食べたのでインスリンを分泌する、という系があります。
後者がインクレチンと言われるGLP-1, GIPというホルモンです。
胃に食事が入ってきて腸で吸収されるときに分泌されます。
非常に多様な働きを持ちますが基本的にはインスリン分泌を促すと同時に脳に働きかけて満腹感を与えてくれる、というのがポイントです。あとは胃の動きをゆったりにして急激な血糖値の上昇を抑制させます。(急激な血糖上昇はインスリンの過剰分泌につながりつまり太ります)
基本的に注射薬しかなかったのですがリベルサスの登場で飲み薬になり使いやすくなりました。
早朝の空腹時に内服していただいて30分は絶食していただく必要があるというのが面倒ですが生活リズムの中に組み込めれば割と驚くべき効果を発揮しています。
通常は5 % くらいしか痩せない(60 kgの人で-3 kgくらい)と言われますが生活指導と合わせて当院では-10 kgぐらいになる方もおられます。標準体重に近くなり他の糖尿病薬を減らしても非常に良好なコントロールが得られたりとばっちりハマれば素晴らしい薬という印象です。
今後、肥満症に対する注射薬も認可が予定されています。
残念ながら起床後すぐにご飯を食べて出勤される男性への処方がなかなか出来ずもどかしいのですがやはり痩せるとモチベーションも上がるのだなというのが実感としてあります。ダイエット目的では処方できませんが糖尿病治療に悩まれている方には福音となる治療薬と思います。
ご希望があればご相談ください。
当真貴志雄