甲状腺機能低下症の多くは橋本病によるもので潜在的な患者数は1000万人とも言われます。
ただし自覚症状を生じて治療を要する甲状腺機能低下症はそのおよそ10分の1であり多くは無症状です。
橋本病は九州大学の外科医である橋下策(はしもとはかる)先生が1912年に甲状腺へのリンパ球浸潤を伴う甲状腺腫大についてドイツの医学雑誌に報告したことで世界的にもHashimoto diseaseと知られています。免疫の異常によりリンパ球による慢性的な甲状腺の破壊が起きて、それを修復する過程でびまん性に甲状腺が腫大し破壊の程度が酷ければ甲状腺ホルモンを作る能力が低下する病気というイメージで良いかと思われます。
血液検査上では自己抗体(TPOAb, TgAb)が陽性になることで臨床的な診断をしますが直ちに治療が必要なわけではなく多くはフォローアップのみで問題ないことが多いです。また自己抗体自体が高い、低いはあまり病気の勢いとは関係がありません。あまりに高いようなら甲状腺の炎症が強かったとは言えますが軽度陽性のみではあまり甲状腺の病気があると思う必要は無いと考えられます。
しかし甲状腺機能異常と指摘されるものの多くは一過性の変化であることも多く軽度の異常をあまり気にしすぎる必要はありません。
期間を開けて再検すれば正常化していることも多くみられますがTSH>10やTSHが感度未満に抑制されていれば甲状腺疾患を疑い精査する必要があります。
甲状腺機能低下症の症状は代謝低下(不活発、冷え、むくみ、体重増加、便秘など)が挙げられますが女性にありがちな日々の不調との区別がつきにくく診断まで時間がかかることも多いです。
診断のきっかけは様々ですが冷えやむくみが気になる場合にはあまり我慢しすぎずに相談いただければ幸いです。
当真貴志雄